百人の腹筋揺れて冬野原    なかはられいこ

(第116回ねじまき句会より。)
無条件におもしろい!映像がバリッと浮かんで、この百人も笑っているかもしれないが、私も一緒に笑ってしまう。多少もやもやとへこんでいることがあっても、この句を読んだ瞬間は爽快な気分である。れいこさんは、きっと冬野原が好きなんだぞと思う。最近、過去の句会の記録を読み返していたわたしは思い当たる。10年前の12月の題は「原」。

げんこつをひらくと冬の原っぱだ    なかはられいこ

2014年12月30日 20:37

おもだった春の動詞をとりのぞく    荻原裕幸

(第12回ねじまき句会より。)
取り除くとどうなるんでしょうね、荻原さん。この句会のときのメモに「言葉の正しい意味よりも伝わる意味を重視しなければ」と書いてある。角度は違うが、2、3日前に見つけた詩人の吉野弘さんの言葉に通じるところがあるように思った。吉野さんは「私たちは普段、言葉を言葉としてことさら意識するということがありません。それは、言葉が意味の安全圏の範囲で使われることが多いからで、もしそれが圏外に逸脱していると感じられた場合は、落ち着かない奇妙な印象を受け、その言葉を嫌悪したり、時にはその言葉の意味を考え直してみることになります。詩はそういう経験と深い関係があり、私はしばしば、変な言葉から詩作の機縁を与えられます。・・・(中略)・・・一見すじの通らない表現の中に、思いのほかのリアリティがあるという事実にも関心を寄せていただきたいのです。」と書いていらっしゃった。リアルに何かを伝えるために日常使っている言葉を意図的にずらしたりゆがめたりすることも必要なのだと思う。失敗をおそれずに!

2014年12月28日 19:42

わたしたちこんなにあったかい 結露    小奈生

と言っていたのは、10年前の12月のわたしだ。きゃー。ほんとにこんなこと言ったかしらとも思うし、いかにも言いそうな気もする。10年はひとむーかし~♪遠いのか近いのかよくわからない時間。川柳を始めて数か月の頃だ。句会のときのA4の紙には、メモやら落書きやらゴチャゴチャと書き込んである。「慣用句→句をダメにする」「かな使用問題」(切れ字の「かな」のこと)「助詞の使い方にはじゅうぶん留意する」「川柳ってなんなのかしらね」「具象表現ではないことを示す必要」「何か足りない!」などなど。わたしは何か変わったのだろうか。少しは川柳のことがわかったのだろうか。時間だけは確かに過ぎたようである。

2014年12月26日 22:07

醤油屋に日暮れの匂い燕    神野紗希

(「エフーディ」Vol.1より。)
昨日はねじまき句会。題詠は「燕」。今年の題は部首「れんが」シリーズで、月を追うごとに画数が多くなっていく傾向なので、12月の「燕」なのである。俳人には信じられない題の設定かもしれない。神野紗希さんの俳句は4月の吟行で読まれたものである。句会の数日前に「エフーディー」が届いたので、この句を見て「あらら、ここにも燕。」とおもしろかった。醤油屋の黒々とした梁や、薄暗い空間の淡い光、醤油の匂い、空気の感触、いろんなものが一気に感じられて、一瞬ふっとその空間に立つ自分を感じた。この落ち着きが俳句なのだろうか。ねじまきのメンバーは、わたしも含めて「燕」に相当苦しめられたようだったが。この俳句を読んだことが、昨日の句会の自分の選に影響しただろうかと少しばかり思うのである。

2014年12月15日 10:58

あれ以来ついさっきまで雪でした    小奈生

名古屋に初雪。沖縄出身の青年が、初めてナマの雪を見たとうきうきしている。「なんか、もっとふわふわしてるのかと思ったら意外に速く落ちるんですね。」「きょうの雪は水分が多いからね。」「へえー、そうなんですか。雪って食べたりしたことあります?」「あるよ。」「おいしいですか?」「いや、子どもの頃の話だし。」「お皿に盛ってシロップとかかけて食べたらおいしそうじゃないですか。」「そんなに真剣に食べるものじゃないから。」「えー!どうしてですか?」「だから、あなた雨降ったら飲んじゃったりする?」「いや、しないッス。」「それと一緒だよ。」せっかくの青年の夢心地を台無しにしていないといいけど。日常生活において、わたしは降るものは全部勘弁してもらいたいのである。

2014年12月 6日 14:23

美しいけむりのための燃やし方    二村鉄子

実は先週の金曜日に書きかけてそのままになっていた。(ということに今気づいた。)
で、改めて。

まあ、ずいぶんあたりまえのことを堂々と!さすが二村さん!と思ってから、ん?いや、変なのかも。「けむり」が目的だなんて、やっぱりおかしい。このへんが愛すべき二村マジックなのだ。あたりまえではないことを、いかにも当然の共通認識のように感じさせてしまうところ。そういう素材の取り出し方がおもしろい。二村さんの句を読むと、素材との向き合い方について考えさせられる。

2014年12月 1日 17:19