固まってしまわないよう揺れている    なかはられいこ

(第104回ねじまき句会より。)
This is Senryu!を感じさせる一句である。(Senryuとローマ字入力すると赤い波線がつく。ちなみに、Haikuにはつかない。くくぅ。)これは題詠「固」に対する作品だ。題との向き合い方も真っ当このうえない。熟語を使うおもしろさもあるけれど、できれば「固い」とか「固まる」の形でそのまま使えればベストだろう。固まることは安定することに通じるが、作者は固まることを恐れている。少なくとも好ましくないと感じている。しかし、固まらないためにしていることといったら、揺れることなのだ。普通と言えば普通だが、揺れているところを想像すると、何だか情けない図である。それでも、揺れていずにはいられないところがおもしろい。わたしたちって、そんなに強くもかっこよくもありませんからね。固まらないように揺れているちょっと情けない人が大好きになる。

2013年11月11日 14:52

針の穴すっと通って秋になる    加藤富美子

(朝日新聞「天声人語」11月1日より。)
天声人語の中で東海柳壇の一句が紹介された。選者はなかはられいこさん、10月17日(木)掲載分である。この日の天声人語は「人の『力』を感じた10月の言葉から」というテーマであった。プロスポーツ選手や受刑者の社会復帰を支えるプロジェクトに関わる人、水俣病被害者、ライフセービング選手権に出場した東日本大震災の被災者である高校生などの一言とともにこの川柳が紹介された。「針の銀色に見つけた、小さい小さい秋である。」と結ばれている。筆者は、生活の中の一瞬に季節をとらえる感性のしなやかさ、繊細さに「人の『力』」を感じたのだろうか。読者の感動が、秋の季節感にではなく、それを感じ取った人に向けられたというところに川柳の力を感じる。

2013年11月 7日 16:37

どちらかといえば明るい糸切り歯    妹尾凛

(第104回ねじまき句会より。)
「明るい」という形容が絶妙だ。口中は暗し。こわい。あーーんと口を開けてみせるのはかなり抵抗がある。歯医者さんに行くのをためらうのは、何もキーーーンと歯を削る音に対する恐怖感からばかりではない。さてその口中に居並ぶ歯のなかで、糸切り歯が取り上げられる。八重歯になったりすると、昔は愛らしさのシンボルでもあったが、今では歯列矯正のために抜かれてしまうらしい。それはともかく、糸切り歯である。他の歯とはちょっと形が違うのである。名前もいい。犬歯では困る。日陰の歯たちが多い中で、日なたを感じさせる歯である。個人的には、糸切り歯に明るさを感じている作者が好きってことかなあ。

2013年11月 2日 15:44